【事例】樹脂パッキンからの材質変更と、設計者を支えたデータと実績
1. 背景と課題
樹脂パッキンの高温の壁
大手産業機械メーカー様からいただいたご相談は、プラント等で稼働するアクチュエータ(バルブ駆動部など)の往復運動軸用シールに関するものでした。
最大のネックは、その過酷な使用環境です。
システム内を流れる空気は350℃という高温に達するため、これまで標準的に使用してきた樹脂製のVパッキンでは耐熱性が全く足りず、シール機能が維持できないという深刻な課題に直面しておられました。
本事例の解決ポイント
| 項目 | 従来(樹脂Vパッキン) | 提案(グラファイト) |
|---|---|---|
| 耐熱温度 | 350°Cまで全く耐えきれない | 350°C(実績470℃) |
| 課題解決の鍵 | – | 推力計算データによる設計支援 |
2. 導入までのプロセス
グラファイトの提案と、設計上の新たな懸念
この高温課題をクリアするため、弊社はすぐさま熱に強い「膨張黒鉛(グラファイト)リング」をご提案しました。
早期に試作評価へ移れるよう、近似サイズの既存金型を活用し、黒鉛特有の「軸方向に圧縮すると径方向に膨らむ性質」を利用して隙間を埋めるというスピーディな解決策を提示しました。
しかし、ここで設計担当者様から新たな懸念が示されました。
「樹脂から硬いグラファイトに変更した場合、往復運動時に軸を動かすための推力(摺動抵抗)はどれくらいになるのか?」
この抵抗値が分からないことには、アクチュエータのモーターや駆動機構の適切な設計・選定ができず、プロジェクトが前に進まない状況でした。
3. 検証結果
データを駆使した理論値と、それを裏付ける実績
弊社は単なる「部品の納入」で終わらせず、設計の不安を取り除くためのサポートに動きました。
過去の試験データを引っ張り出し、今回の機器の面積比や圧力比、さらには「高温・乾燥状態による摩擦係数の増加」という安全率までを見込んだ独自の補正計算を実施。
実働予想値と、設計上の最大推奨値という明確な数値データを算出し、技術資料としてご提出しました。
さらに、「新しい素材への変更に対する現場の不安」を払拭するため、今回の条件をさらに上回る、製紙プラントのボイラー設備における「温度470°C」という極めて過酷な環境下での確かな稼働実績でした。
4. 今後の展望
理論と実績が生み出した「安心感」
弊社が提出した詳細な推力計算データと、470°C環境での実績。
これらを目にしたご担当者様からは「非常にいい安心材料となった」と、大変高い評価をいただくことができました。
設計上の見通しが明確になったことで開発は進み、現在、実機への組み込みと本格的な試作評価に向けて、プロジェクトは進行しています。
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