REACH規則
REACH規則は、欧州連合 (EU) における化学物質の登録、評価、認可、制限に関する包括的な規則です。この規則に基づき、PFASは「高懸念物質(SVHC)」に指定され、約10,000種類以上のPFASに対する製造、上市、使用のほぼ全面的な禁止を提案する包括的な規制案が審議されています 。EUは「予防原則」に基づき、PFASを排除するアプローチを取っており、欧州市場に製品を供給する企業にPFASフリー化を強く促す国際的な規制の先駆けとなっています。
ストックホルム条約 (POPs条約)は、残留性有機汚染物質 (POPs) の製造、使用、排出を国際的に規制するための多国間条約です。PFASの一部であるPFOSは2009年に、PFOAは2019年に、PFHxSは2024年に規制対象物質として追加されており、国際的な協力によってPFAS汚染の拡散を防ぐことを目指しています 。この条約は、PFASのような難分解性物質による地球規模の汚染に対処するための重要な国際的枠組みの一つです。
日米地位協定 (SOFA)は、米軍基地からのPFAS汚染が疑われる地域において、日本当局が米国の許可なく基地に立ち入り、詳細な汚染調査を行うことを妨げている協定です。この協定は、米軍基地がPFASの汚染源として疑われる場合でも、日本側による詳細な調査を制限し、「調査上のブラックホール」を生み出す原因となっています 。これにより、日本のPFAS対策において大きな課題となっており、日米地位協定の環境条項の改定を求める政治的な動きも活発化しています。
PFOA (ペルフルオロオクタン酸)は、PFASの一種で、フッ素樹脂加工品(焦げ付き防止加工のフライパンなど)や撥水剤などに広く利用されてきました。WHOの国際がん研究機関 (IARC) により「発がん性がある」と分類されています 。日本では2021年までに製造・輸入が禁止され、欧州では2020年以降、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の規制対象です。環境中で極めて分解されにくく、生物の体内に蓄積する性質を持つため 、健康と環境への影響が懸念されています 。
◦ 詳しくはこちら: 環境省のPFASに関するページ
PFOS (ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、PFASの一種で、泡消火剤や表面処理剤などに過去広く使用されてきた化学物質です。WHOの国際がん研究機関 (IARC) により「発がん性の可能性がある」と分類されています。日本では2021年までに製造・輸入が禁止され、欧州では2009年以来、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の規制対象です。環境中で分解されにくく生物に蓄積する性質を持つため、世界的に汚染が問題視されています。
◦ 詳しくはこちら: 環境省のPFASに関するページ
PFAS汚染は、特定の工業地帯や基地周辺の問題にとどまらず、日本全国、さらには地球規模で広がっています。
• 全国的な汚染拡大: 2025年7月の報告では、日本全国で採取された21名の遺体の全臓器からPFASが検出されました。これは、汚染が工場や軍事基地といった発生源から海流などを通じて遠隔地の離島にまで拡散し、魚介類などを介した生物濃縮によって食物連鎖全体に及んでいる可能性を示唆しています。絶滅危惧種であるツシマヤマネコからも高濃度のPFASが検出されており、生態系への深刻な影響が懸念されています。
• 水道水・地下水の高濃度汚染: 全国の河川や地下水で国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)を超える汚染が多数報告されています。特に、自衛隊や米軍基地周辺では高濃度の検出が問題視されており、埼玉県内の保険会社敷地では、かつてPFOSを開発していた研究所の影響で高濃度汚染が確認されるなど、過去の産業活動が現代に影響を及ぼす事例も報告されています。
• 新たな汚染源と拡散経路: 熊本県の半導体大手TSMC工場周辺の河川でも汚染が確認されており、グローバルな半導体競争がもたらす環境コストへの懸念が高まっています。さらに、アラブ首長国連邦の研究では砂漠の塵からPFASが検出され、これまで過小評価されていた大気を通じた地球規模での拡散経路が明らかになりました。
PFASに対する規制は世界的に強化されていますが、国や地域によってそのアプローチには大きな隔たりがあります。
• 米国の厳格な基準: 米国環境保護庁(EPA)は、飲料水中の主要なPFAS(PFOA、PFOS)に対し、1リットルあたり4ナノグラムという世界で最も厳しい基準を設定しました。
• EUの包括的禁止: 欧州連合(EU)は、約10,000種類に及ぶほぼ全てのPFASの製造・使用を原則禁止する、最も抜本的な「包括的規制案」を進めています。これは予防原則に基づいたアプローチです。
• 日本の規制と課題: 日本の水道水における基準は、1リットルあたり50ナノグラムであり、米国の12.5倍も緩い「暫定目標値」です。この目標値は2027年4月から法的な「水質基準」に引き上げられ、定期検査が義務化される予定ですが、基準値自体の見直しは予定されていません。このため、日本の規制は欧米に比べて遅れているとの批判が根強くあります。
当初は発がん性が中心だった健康リスクの議論は、より身近な疾患へと拡大しています。
• 発がん性の認定: WHOの国際がん研究機関(IARC)は、PFOAを「発がん性がある(グループ1)」、PFOSを「発がん性の可能性がある(グループ2B)」に分類しています。
• 心血管疾患との関連: 2025年7月、沖縄・京都の研究チームが、PFASの一種であるPFHxSの血中濃度が高いと、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるという国内初の研究結果を発表しました。これは、PFASのリスクが特定のがんだけでなく、より一般的な生活習慣病にも及ぶことを示唆する重要な発見です。
• 体内での蓄積メカニズム: 近年の研究で、ヒトの腸内細菌が特定のPFASを蓄積する能力を持つことが判明しました。これはPFASが体内に長く留まる一因と考えられています。
PFAS問題は、企業の責任追及が新たな段階に入ったことを示しています。
• 経営幹部への刑事責任: 2025年6月、イタリアの裁判所はPFASによる水質汚染で、三菱商事の元子会社ミテニの元幹部ら(日本人3名を含む)に対し、最大で禁錮17年6ヶ月という実刑判決を下しました。これは、環境汚染が企業の財務問題だけでなく、経営陣個人の刑事責任を問われる重大なリスクであることを世界に示しました。
• 除去・代替技術の開発:
◦ 除去技術: 汚染水からPFASを取り除く技術として、粒状活性炭(GAC)逆浸透膜(RO膜)、イオン交換樹脂などが有効とされていますが、高コストであることや処理後の廃棄物問題が課題です。
◦ デトックスの可能性: 腸内細菌がPFASを体外へ排出する可能性があるとの研究から、「プロバイオティクス」を用いた体内除去(デトックス)という新しい対策も模索され始めています。ただし、まだ研究段階であり慎重な検討が必要です。
◦ PFASフリー素材: 3M社が2025年末までに全てのPFAS製造から撤退すると発表したことで、半導体や自動車といった基幹産業で深刻なサプライチェーン危機が懸念されています。これを受け、PFASの特性を持つ代替素材の開発が世界的に急がれています。
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